"恋人には好きな花の名前を教えなさい"
そう言われる理由は、一年に一回、花が開花する度に自分を思い出させるためだとか。
花の香りのせいもあるのかな。
香りと記憶がリンクすることをプルースト現象って言うんだってさ。
あの子が好きだった花、という思い出しかたって、とても美しくて愛おしいよね。
かくいう私は悲しみを孕んだ感情とともに思い出して欲しかったりもするのだけれどね。
私はどんな風に記憶に残るのだろう。
儚くて消えてしまいそうだと言われると、私の美しかった記憶全てで塗り固めた鎧はとても厚くて透明なんだなぁと嬉しくなる。
まぁ、実際はただの快楽主義者で、記憶に残るためならなんでもするルーズな自尊心の低い人間でしかないけどね。
だから私も花の力や歌の力を借りるのか。
私を思い出す鍵を担って頂いてるものは本当にいくつかしかないけれど。
カスミソウ、アイネクライネ、グレープフルーツの香水と、死にたがり。
夏が雨に溶けてまとわりつくような日に死んで、そんなお天気の日にふっと私がよぎればいいと思って生きてるからね。
私の象徴としてその人の中に私が残るなら、記してある憶いよりも、拭いきれない痛みに似た感覚の方がどれだけ嬉しいか。
私があなたたちから離れてからカスミソウと出会った時には、少しだけ心を揺らして何かしらの痛みを感じてくれればいい。
私の為だけに歌ってた詩を別の機会に歌う時には何のために歌ったとしても私がチラついて欲しいし、もっといえば私を思い出すせいで歌えなくなって欲しい。
そして、もしあの香りがあなたの前を通ったなら胸の痛みを肴にぜひお酒を飲んで欲しいと思う。
その全てのことが少し苦手になってくれとさえ思う。
だってその時には私はもうあなたたちの世界のどこにもいなくなっていて、ずっと遠くでその時撒いた種が芽を出すのを待っているのだから。
そうだ。
この小さな私の"お気に入り"を大切な人達に刷り込むことは種を撒くことと同意だ。
変わらぬ愛なんてないのだから。
いつか疼いて、密かに黒い薔薇でも咲かせてくれたら嬉しいと思う。
それを見て私は綻ぶし、
君たちの中で私の撒いた種は咲うのだから。
あの花に、あの歌に、あの香りに私を託すよ。
そういえば2020になったね。
今年もよろしゅう、という感覚、
2019、大切にいきたいと思っていたのに、
どちらかと言うと進まない年ではあった気がする。
ねえ、今年の私は何か得られるかな。
ちゃんと進めるのかな。
2/9にもし気が乗れば、あの日の私への手紙を書くことにしよう。
まっててね。
ちなみにこの花はマリーゴールドだよ。