1mm.

わたしのこころの 真空パック

2020-01-01から1年間の記事一覧

小説:小さな嘘

小さな嘘をついた。 そうしないとあなたと居られなかったから。 強がりなのか嘘なのか、 差のないくらいの小さな嘘をついた。 痛くないよ。苦しくないよ。 あなたと居るのに苦しいことなんてひとつもないよ。 そうやって笑って見せた。 そうしないとあなたは…

白けてゆく記憶

ずっと昔な気がする。 貴女はまだ笑っていて、そして君は私に種をまいた。 笑った貴女を最後に見たのはいつだったっけ。 初めて貴女の口から注ぎ込まれた9%の桃の味は今でも口に入れると心做しか早く酔う。 あの三人の記憶は、三人で邂逅したいのに。 貴女が…

無題

女は月に一度鎧を脱がなくてはいけないのだ 昨日の夢で私が囁いた そうだなぁ、今の私は剥き出しだね 嫌いな私だよね "儚くて消えてしまいそうな私"でいるための "美しかった記憶全てで塗り固めた鎧" これを着ている時だけは涙も憎悪もなくなるのに。 お酒を…

懺悔と独白と私への薬

ピアスの穴と同じだ 初めはきちんと世話をしていても怠惰で潰してしまう だいたい私なんてそれくらいのものでしかない ただ、息をするよりも無意識に 途方もなく長い間眺め続けたものもあった 見上げていると思っていた眩いものは 自身を見失いかけた時に私…

春の夜の夢

反芻する。 吐き出した煙を吸い込むように 過去の痛みを反芻する。 それと同じくらい あなたから貰った心を反芻する。 言葉は完璧じゃないし 私は未完成だ。 だからこそあなたの伝えてくれる言葉たちが大切で大切で仕方が無いのだ。 心と言葉が全く同じ色を…

関係の賞味期限

泣き疲れて眠ったことも、無くなった関係の亡骸を抱えて痛んだ胸も、全てが鮮明に残っている。 人生で一番長く大切にした人は消えてしまったのかもしれない。 もしかしたらあの子の元へ行ったのかもしれない。 私がどんなに懸命に貴方の素敵なところを叫んだ…

花の名前

"恋人には好きな花の名前を教えなさい" そう言われる理由は、一年に一回、花が開花する度に自分を思い出させるためだとか。 花の香りのせいもあるのかな。 香りと記憶がリンクすることをプルースト現象って言うんだってさ。 あの子が好きだった花、という思…