1mm.

わたしのこころの 真空パック

白けてゆく記憶

ずっと昔な気がする。

貴女はまだ笑っていて、そして君は私に種をまいた。

 

笑った貴女を最後に見たのはいつだったっけ。

初めて貴女の口から注ぎ込まれた9%の桃の味は今でも口に入れると心做しか早く酔う。

 

あの三人の記憶は、三人で邂逅したいのに。

貴女が消えてしまったので

私達二人はあの記憶にずっと囚われている。

 

私達を置いてどこに行ったの。

消えてしまったのかな。

 

貴女の形を確かめる為に、彼と私はお互いの手の届く範囲から出ることが出来ない。

二人でじゃないと辛くてあなたを思い出せないし、見つけ出すことさえも困難になってしまった。

近くにいたら辛いのに、完全にサヨナラできないのは全て貴女のせいだよ。

 

共犯のような災害のような大きな罪悪感と悲しみを与えて自分はすっと消えてしまうなんて。

あの日の事を知っているのはこの世に彼と私以外いないじゃない。

私たちは貴女というひとつの傷を共有している世界にたった二人で、その特別がたまらなく苦しい。

心臓になれなかったらほかは何になる気もなかった。

貴女のせいで、彼が絡みついて離れないの。

 

そう、全部貴女のせい。

 

早く逢いに来てくれなきゃ許せないよ。

ねぇ、逢いたいよ。

 

また私のために歌って

一緒に笑ってよ。

 

もう私お酒も飲めるんだよ。

届かないだろうけどさ。

 

夢でいいから。

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無題

女は月に一度鎧を脱がなくてはいけないのだ

昨日の夢で私が囁いた

そうだなぁ、今の私は剥き出しだね

嫌いな私だよね

 

"儚くて消えてしまいそうな私"でいるための

"美しかった記憶全てで塗り固めた鎧"

 

これを着ている時だけは涙も憎悪もなくなるのに。

 

お酒を飲むと時々顔を見せる

いちばん嫌いな私とずっとそばにいなくちゃならない

 

もっと柔らかに笑いたい

もっと優しくしたい

未来なんて怖い

 

えいえんを、えいえんにくりかえしたい

 

お昼のハンバーグと

緑茶ハイと

となりのぬくもりと

優しい映画

 

えいえんに、えいえんをくりかえしたい

 

やさしいひびをいきて

やさしいひとになりたい

懺悔と独白と私への薬

ピアスの穴と同じだ

初めはきちんと世話をしていても怠惰で潰してしまう

だいたい私なんてそれくらいのものでしかない

 

ただ、息をするよりも無意識に

途方もなく長い間眺め続けたものもあった

 

見上げていると思っていた眩いものは

自身を見失いかけた時に私の熱を辿って、

自分の輪郭を思い返していたようだ。

それは私のただの憧憬でしかなかったはずで一方的に眺めていたはずが、

知らず知らずのうちに北極星になれていた。

 

その美しさや弱さに焦がれて見とれていた。

でもそれを求めたことはただの一度もなかった。

 

 

 

吐き戻しそうな痛みが続く夜に

叫び出したいほど脳が揺れる夜に

どうしても参ってしまって

このままベッドに沈んで、吸い込まれて

目覚めることすら忘れ去りたい、と

誰にも聞こえないほどの声でつぶやく。

 

そんな夜に贈られる歌。

言葉は呪いで音は魔法で

いつもそのまま歌に魅了されて

気づいたら深海に沈んだ鼓膜に

きちんと音が届く。

宇宙に浮かんだ肺に

やっと酸素が届く。

そして止まっていた心臓が

いつも通りの速さでのんびり鼓動する。

 

閉ざされた明日のカーテンを少しだけ捲ってくれるようなさり気ない感覚

 

これでまた私は明日も息をさせられる

 

私にとってはもう執着もなければ

必要も無いものだけど

余熱で暖を取れるだけの

ぬるい空気がまだ漂っている

 

何処にも嘘も本当もなくて

どちらも既に手を離しているのに

手が届く距離からは出ない

 

私は女なので、

月に一度どんなに傷つけても足りないくらい

自分が嫌いになるし

この72時間は

何も知らない

言葉すらも分からない

表情も何も見えない

声も出ない

救いもない

自責、自傷、自爆の無限ループで

何度も自殺を繰り返す

 

そうして死んだ私を私が踏み付ける夢を見る

 

そんな私は

熱を辿った先で

私の輪郭を拾って待っててくれる

私のことを一切愛していない

私の存在をその存在で肯定してくれる

そんなぬるい空気に救われていたんだ

 

今日はいつもより沢山人を傷つけた

たくさんの人を心で殺して

たくさんの人の心を潰して

それを絞って掻き集めて飲みほした。

 

だからきっと、今日で全ての人に嫌われて

全ての人が離れた。

 

5日後に新たに愛されるために

愛するために

 

本当は私も私を嫌っていいんだよ。

いつも、私を嫌う私を嫌いになって

苦しんでしまう私への

精一杯の労いを込めて

 

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春の夜の夢

 

反芻する。

吐き出した煙を吸い込むように

過去の痛みを反芻する。

 

それと同じくらい

あなたから貰った心を反芻する。

 

言葉は完璧じゃないし

私は未完成だ。

だからこそあなたの伝えてくれる言葉たちが大切で大切で仕方が無いのだ。

心と言葉が全く同じ色をしていたら、

私は言葉なんて捨てて

心を記すのを辞めて

絵の具を溶かして生きていただろう。

 

暖かな人とお酒を飲んだ

心が暴れて言葉にするのが間に合わなくて

時間が全く足りなかった

 

わたしも、あなたも、じかんも、こころも、

有限なのだなあと

アルコールに脳を浸しながらぼんやりと考えた

 

有限であるから愛おしいほど儚いのだ

そして私はだからこそ反芻するのだろう

 

白いハートのピアスを頂いた

ここにも心があった 

小さなきらきらした白いハート

 

壊れてしまっても

私がいつか全てを忘れてしまっても

あなたの有限の時間の中に私がいたことは消えないのだ

 

アルコールの最中、鈍った時間の進み方も

ふと振り返れば息を飲む暇もないほど短い

コロナの驚異がどれほどあっても

新宿の夜は人の人生が飽和していた

 

今日も私は大切なものと

大切な時間を過ごす

 

どれほどこの人生が傷もうと

それすら些細に思える程の大切なものたち

寧ろそれが彼らに出会えた対価であるなら

まだまだ傷が足りないとさえ感じる程。

 

喉元を過ぎただけで

あの頃は本当に地獄そのものだったけど。

私の心の血肉が増えてゆく度に

地獄への恐怖が減る

 

日々は大切なのだと

日々を無駄にしながら思う。

 

忘れたくない日を、少しでも沢山

忘れてしまうほど沢山重ねていきたいと思う。

 

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もうすぐ20歳も終わるらしい。

 

15歳の私が死なないでいてくれた。

16歳の私が留まってくれた。

17歳の私が転校してでも心を護ってくれて

18歳の私がちゃんと大切なものを掴む努力をしてくれた。

19歳の私がした経験は、今までの人生で一番美しい光景だった。

 

20歳の私はやっと死ななくてよかったと思えるようになったよ。

 

ありがとう。

また、反芻しに戻ってくるからね。

 

 

関係の賞味期限

泣き疲れて眠ったことも、無くなった関係の亡骸を抱えて痛んだ胸も、全てが鮮明に残っている。

 

人生で一番長く大切にした人は消えてしまったのかもしれない。

もしかしたらあの子の元へ行ったのかもしれない。

 

私がどんなに懸命に貴方の素敵なところを叫んだとして、それに意味はなかった。

当たり前ではあるけれど、その孤独は生涯貴方のものでしかなかった。

 

私のことをどれだけ愛してくれようと、私が返せる全てを尽くしたところで、あの日殺した愛情や、大切な何かへの永い永い憂いの色と見比べて少しでも輪郭がぼやけて見えると苦しくなるのだ。

 

大切になるのが怖い。

 

常に私が鮮やかな世界にいることは出来ない。

メッキが剥がれたら、ガラスが割れたら、色が混ざったら私は少しずつ醜くなって、その度に私の元から人が去る。

 

どんなに私に愛があろうときっとそれは変わらない。

 

他者が私の生き様に抱く不安、即ちそれはエゴである。分かっているのだ。

無償なんてものは無い。

愛と呼んでいるだけでそれは押し付け、

ないしは執着で、とても利己的なものなのだ。

 

それでいい、それだからこそ美しいし愛おしい。

 

ただ、愛、ないし執着というものの賞味期限は非常に短い。

おそらく期限が切れても口にすることは造作もないが、鮮度や味は確実に落ちる。

 

少しずつ少しずつ死んでゆく。

カラカラと終わる音がする。

 

関係性に名前があれば、貴方は今でもそばに居たのかと思うこともある。

 

否。

名前のない、なんとも言い様のない関係は、とても緩やかに穏やかに変化し、長く味を保って、そこに在り続けた。

 

逆に名前の付いた大きな大切は一瞬の光となってすぐに死んだ。

あの日、二人で大切に大切に弔って瞬く間に風化した。

 

人間なんてそんなものなのだ。

 

名前がある関係に安心して甘えてしまったりする反面、名前をつけずに愛だけで育てられた関係は緩やかにしか冷めない。

 

私は間違っているのだろうか。

そんなに名前が大切なのだろうか。

 

大切な人たちと私の関係に、友達とか恋人とか、そんなチープな名札をさげたくないと思う私がおかしいのだろうか。

 

 

これがわがままなら、私なんて突き飛ばして走って逃げればいいのだ。

 

そのままだと傷つくのは紛れもない自身なのだから。

 

 

私が与えられる幸せなんて限られているし、私と共に死ねる人なんて私より他にいない。

死にたがりで苦し紛れにアルコールを流して、体を鈍感にさせて心だけを露出して、そうやってしか生きられない私を、その時目の前で笑っていてくれる人と向き合って幸せだと呟くことしかできない私を、無理に愛してくれなくてもいいのだ。

 

私すらこんな人間を抱きしめることが出来ないのだから。

私は人を苦しめたくて息をしている訳では無いのに。

自分は疎か他の人の日々までも壊すこんな人間をどうやって愛せばいいのだろう。

答えが出る前に私の事を葬り去ってしまいそうだ。

私って私と生きていく気はあるのかしら。

 

 

今日も私なんかを大切にしてくれてる全ての人と、あの日の私への懺悔をしなくてはならない。

 

ごめんねせかい。

ごめんねわたし。

 

 

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ps.私の戯言置き場も気づけば三年目だそうです。

 

覗いてくれる皆様、本当にありがとう。

雨ばかり降らせてしまうけど、いつかこの雨で草木が萌ことあれ、といった気持ちで、これからも綴らせてください。

花の名前

"恋人には好きな花の名前を教えなさい"

そう言われる理由は、一年に一回、花が開花する度に自分を思い出させるためだとか。

花の香りのせいもあるのかな。

香りと記憶がリンクすることをプルースト現象って言うんだってさ。

 

あの子が好きだった花、という思い出しかたって、とても美しくて愛おしいよね。

かくいう私は悲しみを孕んだ感情とともに思い出して欲しかったりもするのだけれどね。

 

私はどんな風に記憶に残るのだろう。

儚くて消えてしまいそうだと言われると、私の美しかった記憶全てで塗り固めた鎧はとても厚くて透明なんだなぁと嬉しくなる。

まぁ、実際はただの快楽主義者で、記憶に残るためならなんでもするルーズな自尊心の低い人間でしかないけどね。

 

だから私も花の力や歌の力を借りるのか。

私を思い出す鍵を担って頂いてるものは本当にいくつかしかないけれど。

カスミソウ、アイネクライネ、グレープフルーツの香水と、死にたがり。

夏が雨に溶けてまとわりつくような日に死んで、そんなお天気の日にふっと私がよぎればいいと思って生きてるからね。

私の象徴としてその人の中に私が残るなら、記してある憶いよりも、拭いきれない痛みに似た感覚の方がどれだけ嬉しいか。

 

私があなたたちから離れてからカスミソウと出会った時には、少しだけ心を揺らして何かしらの痛みを感じてくれればいい。

私の為だけに歌ってた詩を別の機会に歌う時には何のために歌ったとしても私がチラついて欲しいし、もっといえば私を思い出すせいで歌えなくなって欲しい。

そして、もしあの香りがあなたの前を通ったなら胸の痛みを肴にぜひお酒を飲んで欲しいと思う。

その全てのことが少し苦手になってくれとさえ思う。

だってその時には私はもうあなたたちの世界のどこにもいなくなっていて、ずっと遠くでその時撒いた種が芽を出すのを待っているのだから。

 

そうだ。

この小さな私の"お気に入り"を大切な人達に刷り込むことは種を撒くことと同意だ。

変わらぬ愛なんてないのだから。

 

いつか疼いて、密かに黒い薔薇でも咲かせてくれたら嬉しいと思う。

 

それを見て私は綻ぶし、

君たちの中で私の撒いた種は咲うのだから。

 

あの花に、あの歌に、あの香りに私を託すよ。

 

 

 

 

 

そういえば2020になったね。

今年もよろしゅう、という感覚、

 

2019、大切にいきたいと思っていたのに、

どちらかと言うと進まない年ではあった気がする。

ねえ、今年の私は何か得られるかな。

 

ちゃんと進めるのかな。

 

2/9にもし気が乗れば、あの日の私への手紙を書くことにしよう。

 

まっててね。

 

 

 

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ちなみにこの花はマリーゴールドだよ。

元彼の概念

元彼が好きだ。

私は、元彼のことが嫌いになれない。

"元彼"という概念が好きだ。

愛おしくて仕方ない。

私の一部で、私の人生で、私の価値観の大半で、恋愛観の全てで、痛みの経験の中でも純度が高くて、美しい記憶で、成長のきっかけで、ただの"昔付き合っていた人"という意味だけでは到底表せない。

 

私はあの人に未練がある訳でもないし、

あの子のした事は未だに許してはいないし、

君から未だに注がれている気持ちにも答えられないけれど。

 

でも大好きなの。

世界一愛おしい私の人生の

とってもコアなところにある記憶だと思うの

 

 

重くてごめんね、一生大好きで居させてね

 

今の君たち自身のことはもうきっと当時ほど好きになったりしないけれど

だけど、一緒にいた時間とか一緒にいた時の私とか私と貴方の世界とか、きっとほかの2人では成せない大切なものなの。

 

君たちが君たち自身の世界一の幸せを掴んでくれたらどんなにいいだろうと思う。

 

私は私の世界一を掴むからね。

 

私を造ってくれてありがとう。

 

いつか、私が届くように生きてゆくよ。

 

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